一遍(いっぺん)は、鎌倉時代後期に活躍した僧侶で、時宗(じしゅう)の開祖です。伊予国(現在の愛媛県)の武士の家に生まれましたが、出家して全国を旅する「遊行(ゆぎょう)」の道を選びました。
一遍の教えは、信じるか信じないかに関わらず、念仏さえ唱えれば救われるという非常に徹底したものでした。彼は、名前が書かれたお札を配り歩く「賦算(ふさん)」を行い、さらに歓喜して踊りながら念仏を唱える「踊念仏(おどりねんぶつ)」を広めました。
1274年(元寇の文永の役の年)に大きな悟りを開いた彼は、家も財産も持たず、生涯を旅の中で過ごしました。そのため「遊行上人(ゆぎょうしょうにん)」とも呼ばれます。
彼の死後、その旅の様子は『一遍聖絵(いっぺんひじえ)』という有名な絵巻物に描かれました。そこには、当時の市場や人々のリアルな暮らしぶりが描かれており、歴史を研究する上でも非常に貴重な資料となっています。踊念仏は、後に日本の伝統芸能である「盆踊り」のルーツの一つにもなりました。