阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)は、奈良時代に遣唐使(けんとうし)として中国(唐)に渡った人物です。当時の日本にとって、進んだ文明を持つ唐へ渡ることは、命がけの重大な任務でした。
仲麻呂の凄さは、唐での出世ぶりにあります。彼は外国人でありながら、中国史上最も難しいといわれる試験「科挙(かきょ)」に合格しました。その才能は、時の皇帝・玄宗(げんそう)からも認められ、重要な官職に就いて長く仕えました。また、李白(りはく)や王維(おうい)といった、中国の歴史に名を残す大詩人たちとも深い友情を育みました。
しかし、彼は常に故郷・日本を想っていました。渡航から約35年後、ようやく帰国の機会を得ますが、乗っていた船が暴風雨に遭い、現在のベトナム付近に漂着してしまいます。結局、仲麻呂は二度と日本の土を踏むことはできず、唐の都・長安でその生涯を閉じました。
彼が帰国直前の送別会で、月を見て詠んだとされる歌は、百人一首にも選ばれ、今も多くの日本人の心に響いています。
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
(大空をはるか遠く見渡すと、月が昇っている。あの月は、かつて故郷の春日にある三笠山に昇っていた月と同じものなのだなあ)